取扱事件:借地借家・明渡し
借主に酷と思われるかもしれませんが、「使用貸借」は、貸主と借主の特別な人間関係に基づいて締結されるものですし、賃料もタダですので、「賃貸借」に比べて、借主の権利は弱くなっています。
【賃料の値上げ】
家主から一方的に、来月から賃料を値上げすると言われました。応じなければ、出ていってくれと言われています。どうすればいいのでしょうか。
家賃の増減額を一方的に決めることはできません。貸主と借主が協議することが必要です。
協議でまとまらなければ、貸主が調停を申し立てます。調停でも合意できなければ、訴訟で解決することになります。
なお、もし貸主が、増額した家賃でないと、毎月の家賃を受け取らないと言ったときでも、住んでいる以上、家賃の支払義務があります。家主が家賃を受け取ってくれなければ、借主は、家賃を供託することになります。相当額の支払で義務違反はなくなります。気をつけてください。
【敷金と修繕費用】
借りていた部屋を出ようと思い、大家さんに連絡したら、「壁紙、畳、障子を替える費用を支払え」「クリーニング代を払え」と言われましたが、払わないといけませんか。
支払う必要はありません。賃貸物件を修繕するのは家主の義務です。普通に暮らしていてできた汚れやキズ(通常損耗)や古くなっていくにつれて出てくる傷み(経年変化)は家賃でカバーされているのです。典型的なものが畳やけ、襖・クロスの変色です。ペットによる柱のキズなど、当然予想された汚れやキズを越えた損傷を与えた場合には、平成10年3月に建設省(当時)が「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」を定めていますので参考にしてください。
また、契約書に原状回復せよと書いてあってもその特約はあくまでも「自分で部屋に取り付けた家具やクーラーなどを取り外して元に戻す」ことを取り決めたにすぎません。契約書に具体的にクリーニングまで要求する特約があった場合でも必ずしもその通りに従う義務があるわけではありません。なぜならそれは民法の原則と異なり借主に不利な内容となるものなので借主が良く理解して契約した場合でなければ認められないからです。なお、平成13年4月1日施行の消費者契約法によればこのような特約は無効と判断される可能性が高いでしょう。
ちなみに、以上の説明は居住用賃貸物件の場合であり、営業用賃貸物件の場合は借主もその物件を利用して利益を上げているのですから違う判断がなされることに注意しましょう。
【明け渡し】
家主さんが「マンションに建て替えたいから出て行って欲しい」と言われました。素直に出なければならないのでしょうか。
家主が借家人に明渡しを求めることができるのは、賃料未払いの滞りがないかぎり、家主がどうしても自分でその家を使用しなければならない事情など、正当理由が必要とされています。
マンションに建て替えるという理由だけでは、この正当理由とは認められないでしょう。
あなたは家主の申し出を断ることができます。
【使用貸借】
親戚から、タダで土地を借りて、資材置き場にしています。この度その親戚が、家を建てたいから立ち退いて欲しいと言われていますが、立ち退かないと行けませんか。
賃料がタダとのことですので、あなたの契約は「使用貸借」と言います。使用貸借の場合、期間を定めていればその期間が来た時、また、目的を決めて借りている時はその目的を達した時に、明け渡さないといけません。期間も目的も定めれいなければ、貸主が出ていってくれと言われたら、出ていかないといけません。また、借主であるあなたが亡くなったら、使用借権は相続はできませんので、出ていかないといけません。
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